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実践情報学を学ぶ意義
日常の中では、いまの毎日がこれからもずっと続いていくように思い込みしがちではあるが、いま私たちが当たり前になくては困るものと思って利用しているスマートフォンにしても、コンビニエンスストアにしても、少し前まではまったく存在していないものであった。18歳で選挙権が与えられるようになったことも2016年のことであり、いまの社会制度も歴史的に変わってきたものである。変化の中に生きるということを私たちは忘れがちであり、ここは意識的に目を向ける必要がある。 社会を大きな変化の枠組みでとらえることで、いまを生きる私たちに求められることは何かということが見えてくる。第5期科学技術基本計画(2016〜2020年)では「我が国が目指すべき未来社会の姿」として「Society5.0」が提唱された。狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、新たな社会を指す。とはいっても、工業社会においても農耕や狩猟があり、情報社会も工業社会とともにあるので、単純に排他的な社会段階としてみるべきではなく、重層的で連関的なものとしてとらえるべきであろうが、AI、ビッグデータ、ロボットなどにより新しい未来社会を展望すべきということもまた、私たちのいまである。その「Society5.0」は「ICT(情報通信技術)を最大限活用し、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす『超スマート社会』を未来社会の姿として共有し」たものである。 これを受けて教育分野でも、小学・中学・高校での情報教育の見直し、プログラミング教育の展開、大学での「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」などがすすめられている。 まさに未来を生きるみなさんには、このような未来社会を担う、創ることが求められている。 そのためには未来社会に向けて大きな構想を描くこと、直面する社会的課題を深く理解しその抜本的解決をめざすこと、関係者とのコミュニケーションを通じて理解と共感を広げていくこと、そのような社会変革の障害となることを取り除いていくことなど、テクノロジーの問題ではなく人間・社会の問題に取り組まなくてはならない。 同時に、実際のビジネス、企業や組織等で実施していくためには、ITの基礎知識を持つだけでは不十分である。ITの知識やプログラミング技術を習得すれば、それだけで実際のビジネスでITの開発・利活用が実行できるわけではない。そのためには「実践情報学」とでも言うべき、ITを企業や組織等でどのように活用するか、ITシステムの開発等についての戦略やプロジェクトマネジメント、そしてガバナンスはどのようにすすめられるか、などについての理解と実践的な課題解決力を習得することが求められる。 京都大学情報学ビジネス実践講座は民間企業6社との産学共同講座により開発してきた教育プログラムを提供している。これらはまさに実践的な課題解決力を学ぶことを目的としたものであり、ユニークな位置づけを持つ。 今日、いかなる業種、職種であろうとITは無関係ではありえないと言っても過言ではない状況のもとで、本プログラムはどのような分野でどのような仕事で活躍しようという人にとっても有効かつ有用な学びとなるだろう。 佛教大学社会学部公共政策学科教授 京都大学名誉教授 京都大学客員教授(情報学ビジネス実践講座運営委員会委員長) 若林 靖永